ダナン

2020.03.31

“ダナンの守り神”と称えられるリンウン寺の観音像:ネルソン水嶋のベトナムコラム

ダナンの穴場的夜景スポット・リンウン寺

ダナンにはオススメしたい観光スポットがいくつもあるが、そのなかでもふしぎと、魅力の割にほぼ日本人を見かけない場所がある

それはここ、リンウン寺です。

寺の内部は日本に比べて金や極彩色をあしらった豪奢な感じ、

標高693メートルの小高いソンチャ半島から望むダナンのパノラマ夜景も美しいけれど、

メインはやっぱり…

観音像!その白亜の立ち姿も美しいですが、日暮れ時から夜にかけてライトアップされてくっきりと浮かび上がる姿もまた壮観です。

像の高さは67メートルに至り、これはベトナムにある観音像でもっとも高い。足元の蓮華座は直径35メートルあるそうです。そんな像もふくめたリンウン寺の建立は2004年7月にはじまり、それから6年の月日をかけて2010年7月に完成したという。

日本には数百年の歴史がある寺が当たり前にある中で、意外と浅いその歴史だが、土地そのものの由来はそこそこ古い。19世紀前半、ソンチャ半島の砂浜にどこからともなく仏像が漂着。それを見つけた地元の漁師たちが「縁起が良い」と崇めたところ、海が穏やかになり、彼らも安全に生業を営むことができた。リンウン寺が置かれた場所がまさしくそこなのだという。

 

観光スポットであり地元民の祈りの場所

そんな寺に私がはじめて訪れたのは2015年、地元で仲良くなったベトナム人の友人に連れられてのことだった。その頃はまだパラパラとしか人が見られなかったが、今では平日土日にかかわらず常にたくさんの人であふれかえっている。

日暮れ時ともなると、観音像前にはざっと見回しただけで100人以上の人出が。

訪問客はその話し声から察するに、中国人と韓国人が多い。いつもなぜここに日本人がいないのかとふしぎに思うが、シンプルに、ツアーがほぼないのだろう。中韓はダナンを訪れる外国人の中でも桁違いだし(韓国からの旅行者数については記事「ダナンの地元料理店にキムチが添えられるワケ」をご覧ください)、日本人向けのツアーを回したところで利益は薄いのかもしれない。自力で来るにはバイクを借りないといけないし、タクシーを手配したところでどれくらい待ってもらえば無事に日の入りを見届けられるのかという見当もつきづらい。

と、そんな数多くの観光客でにぎわっているリンウン寺だが、なんだかんだで半数以上を占めるのはベトナム人だ。自撮り棒を持ってキャッキャとセルフィーに励む若い男女を見かけるあたり国内旅行者も多いのだろうが、そんななかで静かに観音像の前でひざまづいて礼拝する人たちは、その普段着という服装からも地元民のように見える。

観音像に拝む人は撮っていなかったので、本堂をお参りするひとびとを代わりに。

彼らがここを訪れる理由はもちろん仏教徒(信者)ということもあるが、それ以前にここは、ダナンに住むひとびとにとって大切な心のよりどころでもあるからだ

 

観音像は中部地方を台風から防ぐ”守り神”

ダナンをふくむベトナム中部は、もともと台風の通り道として知られていた。日本での沖縄や奄美がそうであるように、ときに深刻な風物詩であったのだ。

2006年の台風「Xangsane」/©Jean Christophe André

2009年の台風「Mirinae」/©haithanh

2013年の台風「Nari」/©vtv

「頻繁に台風がやってくる」という環境は、地域の文化にも影響を与えている。たとえば、ベトナムは世界二位の米輸出国で、全国的に稲作が行われているが、中部に関してはそうでもない。

こちらはベトナム北部の棚田で、稲作を行っている。

上の写真はバインカンという麺料理。

南部出身の友人から聞かされた話によると、「地元のバインカンは米粉が使われていたが、ダナンではじめてタピオカ入りを食べて驚いた」らしい。もう20年近く前のことだ。つまり、もともとは、バインカンの原材料は南部では米粉、中部ではタピオカ粉が使われており、その背景にはタピオカの原料であるキャッサバが台風被害を受けづらい根菜類であることも関係しているだろう。ちなみに今バインカンはタピオカが定番である。

そんな台風とともに生きてきた中部の人たちだが、観音像とどう関係してくるのかというと…リンウン寺建立以降に台風がピタリと止んだというのだ。実際のところまったく止まったということはないが、ダナンに暮らす友人に聞くと『「観音像は中部(ダナン市含む)を守っている」とみんなが話す』という。信じる信じないは別にしろ、「観音像は台風を止めた守り神」というのは地元で知らない人はいない確かな通説だ

 

データ的にはバッチリ台風きてるけど

1997年から2017年までのベトナムを襲った台風のデータを調べたところ(JICA協力のもとまとめられたベトナムの災害レポート)、中部(ダナン、またはクアンナム省)を通過した台風は、2006年、2009年、2013年、2015年、2016年であった(前3つの被害はすでに紹介した写真の通り)。

うーん、空気を読まずに言っちゃうと…リンウン寺建立後もバッチリ台風来てないか?と思うのだが、その被害の程度までは追いきれなかったので、2006年と2009年、またそれ以前の被害がとんでもなくて、ひとびとの印象により残った結果、「観音像を建立してから被害が収まった」というイメージが固まったのかもしれない。

いずれにしろ、街の発展に伴う建造物の強度向上や、台風の予測技術の向上とともに、被害が最小限に抑えられるようになっただろうし、それが要因のひとつにはなっていそうではあるが。ただ、確かな事実として、地元民の精神的支えとなっている以上、観音像はその存在意義を存分に全うしている

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投稿者プロフィール

NAMEネルソン水嶋

ライター、編集者、ブロガー。2011年にベトナム・ホーチミン市に移住。以降、ダナンをふくめたベトナム国内各地でノマド生活を送る。ベトナムブログ「べとまる」運営、ブログ関連の賞を三度受賞。ベトナムで好きな街はダナン、最近はムイネーも気になっている。