ダナン

2020.02.03

ダナンの地元料理店にキムチが添えられるワケ:ネルソン水嶋のベトナムコラム

旅行先トレンドトップのダナンと韓国人旅行者

Googleが選ぶ2020年の旅行先トレンドトップにダナンが選ばれた。

実は以前から、「今注目すべき世界の都市」だの、「外国人が住みやすい世界の都市」だの、さまざまなランキング情報が耳に入ることがあったが、統計機関は日本人には聞きなれない海外の出版社やリサーチ会社。そこに他意はないとも言い切れず、話半分という感じだった。

しかし今回は、Googleが旅行先でのホテル検索数に基づいて出した統計なのだという。みんな大好きGoogle!…かどうかはともかくとして、およそインターネットユーザーなら一度はお世話になったであろうものなのだから、信頼性は高い。はず。

では、そんなダナンに訪れる旅行者はどこから来ているのだろう

Googleと違い統計がある訳ではないが、在住日本人の間でもよく言われるのが、韓国だ

 

“国内線並み”にダナンから旅客機が行き来する韓国

海に、街に、お店に、行けばどこでも韓国語を耳にする。

ハノイ発祥のカフェ「Cộng Cà Phê」は海外1号店がソウルということもあって大人気

それもそのはず、ダナンからもっとも多くの旅客機が飛ぶ国がほかでもない韓国だ。2019年11月にとられた統計では、ダナン国際空港から発った国際線のうち、1位はソウルの週166便で、2位は釜山の週55便と上位を独占(※1)ちなみに3位はバンコクの40便で、その差は文字通り桁違い。そもそも同期間のダナンからホーチミン市への便数が237なので、韓国の221便は、「ほぼベトナムの国内線並みに飛んでいる」ということになる。

なお、ベトナム全体の外国人旅行者数としては、2018年の韓国人旅行者は343万人(※2)で、同年の日本人旅行者が82万人(※3)。つまり、韓国人は日本人の4倍以上ベトナムに来ている。ここまでの規模を見せられると、ダナンの街じゅうで韓国語が聴こえることにも納得だ。

空港に着陸する飛行機を見上げると、韓国系の航空会社が目立つ。

 

旅行者ばかりではなく、ベトナムには起業を志してやってくる韓国人の若者も増えているという(※4)。これには韓国国内の就職に、海外での留学やインターンシップなどの経験が有利に働くため、海外での起業を意識しやすいということも背景にあるだろう。そこでまずはとっつきやすく、自国から旅行者が絶えないダナンを拠点に選ぶ人もいるのではないか。

 

韓国人街化するダナンと地元の料理店で添えられるキムチ

そうした状況の中、ダナンで起こっていることが韓国料理店の急増だ。いや、もっと率直に言えば、一部地域ではあるが、ゆるやかな韓国人街化と言ってもいいかもしれない。

人気韓国焼肉店の「Veteran」

ダナン市街地は、ハン川という大きな河川を挟んで陸側と海側に別れる。そこを結ぶ橋も近年になって架けられたものが多く(主要なドラゴンブリッジは2013年完成)、それによってヒト・モノの往来が活発になり、海側はここ数年でビーチリゾートとして急激に発展していった。

ビーチに沿って四つ星以上の高層ホテルが並ぶ

 

法律上はベトナムの土地を外国人は購入できないものの(厳密には自国民でも”国から借りる”だが)、名義貸や共同経営などの手段により、外国人経営の飲食店やホテルが増加。そうなれば、旅行者の中でも圧倒的多数派の韓国人に向けて韓国料理店が増えていくことも自明の理だ。

ここで「ベトナムに行ってまで韓国料理を食べるのか?」という疑問を抱く人もいるかもしれないが、韓国に精通するライターによるとそれはよくあることらしい。バックパッカー街に行ったってよく欧米人旅行者がハンバーガーを頬張っているし、もちろん世代や個人差はあるにしろ、その土地の料理にこだわることは日本人の特性かもしれない(同時によくお腹を壊すけど)。

地元スーパーにも韓国製のインスタント食品が増えた

 

そして最近では、地元のベトナム料理店でも伝統料理の副菜にキムチを発見。コムタムスォン(Cơm tấm sườn)と呼ばれる炙った南部名物料理で、付け合わせに浅漬けやなますが添えられることが多いのだが、それがキムチに取って代わられていた。もともと韓国人旅行者に人気の店だったので寄せていったのだろうが、ここには地元客も多い。それがウケて、店からダナンへ、ダナンから全国へ、広がっていく可能性だってある。私も「アリ」な組み合わせだと思った。

浅漬けながらもキムチが添えられたコムタムスォン

 

ベトナム料理は独自の料理のほか、豊富な麺料理といい、バインミー(バケットサンドウィッチ)といい、歴史上攻防を繰り返してきた中国とフランスのミックスという一面も持っている。そのうえ近年は韓国ブームがつづいており、若者のファッションにしろV-POPにしろ韓国に寄せているし、チーズダッカルビやヤンニョムチキンも流行った。私のベトナム人の友人も家でキムチを漬けていると話していた。他国文化を取り込むことは、実はお家芸なのかもしれない。

 

ダナンは「多様性特区」

このコラムを締める前に、誤解されないためにも私の意見を述べておきたい。

ベトナムにとって日韓の立ち位置はよく似ていると感じる。東アジアの国で、先んじて発展した国で(物差しにもよるが)、ベトナムからの労働者が多かったり、コンテンツとして文化が親しまれていたり。つまりライバルという訳で、「韓国人街化が…」と書くと、「日本も負けじと対抗しよう」という声が上がりがち。だと感じる。が、そんなことを煽る気持ちはまるでない。

ベトナムのダナン(の一部が)韓国人街化している、ベトナム料理にキムチが添えられている、いいじゃないか。むしろダナンで食べられるメニューが増える分、個人的にはありがたい。陣地取り合戦じゃなし、街が変わりたいなら変わればいい。

では何が言いたいかというと、ただただ、ダナンはベトナムにおける「多様性特区」のようなものなのだろうと。LCCが飛び、外国人在住者も旅行者も増えた今、橋が架かり海側が発展したことで、のどかな港町だったダナンは急転して外国人に開かれた国際都市として変貌しつつある。Googleによる旅行先トレンドトップの背景には、そんな経緯があってこそなのかもしれない。

ドラゴンブリッジは橋であると同時にアトラクションでもある

 

観光客を呼び込むために、ドラゴンブリッジ、愛の桟橋、ゴールデンブリッジ、などなどの仕掛けを放ち続け(詳しくは調べてほしい)、話題性にも事欠かない。そんなダナンを「ベトナムらしくない」という人もいるとは思うが、そういう街がひとつくらいあっても良いと私は思う。

最後に、ご存じの通り、世界でもっとも人口の多い国は中国だ。今のダナンは韓国人が多くとも、ベトナム全体では中国人旅行者の存在が際立つ。何なら来年、ここで書いたことがガラリと変わる可能性もある。ダナンという街はまだまだダイナミックに変化するだろう。

 

※1 Top 10 Busiest international flights From Da Nang Airport by Frequency Nov 2019
※2 韓国人に人気の海外旅行先、ベトナムが中国抜き2位に、首位は日本―韓国メディア
※3 Việt Nam’s tourism to be promoted in Japan
※4 ベトナムに押し寄せる韓国業者と若者、夢破れるケースも多発

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投稿者プロフィール

NAMEネルソン水嶋

ライター、編集者、ブロガー。2011年にベトナム・ホーチミン市に移住。以降、ダナンをふくめたベトナム国内各地でノマド生活を送る。ベトナムブログ「べとまる」運営、ブログ関連の賞を三度受賞。ベトナムで好きな街はダナン、最近はムイネーも気になっている。